寝太郎ブログ

2月10日文庫本発売→『自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ (ちくま文庫)』

ホームレス時代の話 その1  


やっと降りましたね、雪。約一ヶ月半ぶり。やっぱ冬はこうでなくちゃ。


10万円で家を建てて生活する寝太郎のブログ


この奥に我が家があります。道は行き止まりになってます。車の轍は、クロネコヤマトの軽ワゴンです。
そろそろリヤカー号で大学図書館巡りでもしたいんですが、一応雪がやむまで家でじっとしています。


元々、私は都内の安アパートに住んでいました。都心も都心の某高級住宅地にあったので、安アパートと言っても風呂無しで32000円でしたが、60000円以内のアパートがほとんど無い地域で、奇跡的な安さでした。ホームページにも書きましたが、お金が無くてホームレスになったわけではありません。その理由を説明しても、おそらくつまらないし、うまく表現できる自信もないので、ここではひとまず割愛させていただきます。


コンビニや八百屋でダンボールをいただき、高架下で棺桶型ハウスを作って生活を始めたのですが、最初の頃は嫌なことが続きました。ある日「帰宅」してみると、棺桶ハウスの天板の、ちょうど顔の辺りに、刃物で無数に穴が開けられていたことがありました。これは精神的にやられました。けれど、それで生活をやめようとは思いませんでした。たぶんこれは、本気で自分を傷つけようとするものではなく、脅しだと判断したからです。よく暴力団が民家の窓ガラスに銃弾を撃ち込んだりとかいう、あれの類です。あれも本当に住民を殺そうとしているというよりは、脅しだと思うんですよ。小さな棺桶型ダンボールハウスっていうのは、外に履物を置いて中に入るので、中に人がいるかどうか一目でわかるんですね。もちろん、当時そう判断したというだけであって、正しかったのかどうかは知る由もありません。ただ念のために、100均でプラスチックの下敷きを買ってきて、ハウスの内側に貼り付けました。防刃仕様です。

別の日には、近くのホームレスの方がやってきて、「いつまでいるの?困るんだよ」と説教されました。人が増える→お役所の目が厳しくなる→みんな居られなくなる、という状況のようです。「すみません、もう少し」と言いつつ、結局1年以上もそこに居座ることに。


これらの出来事で精神的に萎えたのは、ただ存在するだけで疎まれるという、「マイナスの出発点」がホームレスの世界にも存在するという事実を思い知らされたからです。一般市民の生活も似たようなところがあります。何もしないのが普通の人で、あとは自分の努力に応じてよいことがある、そういう世界だったらいいのですが、普通の人として存在するための最低限の条件のようなものがあります。一番わかりやすいところでは、定職について週5日、ただ食べ物を手に入れるため以上に働いて、この社会を維持するのが普通の人であるという常識でしょう。おそらく週5日働くべきだという人は、私が週1日働けば食べ物が得られるのは、大多数の人間が週5日働いてこの社会が維持されて初めて、局所的に成り立っていることであり、「週5日が働き過ぎ」という意見には根本的な間違いやエゴが入っている、といわれるかもしれません。それに対して私は、人々が生活水準を下げ、労働は週1日、今と同じように子孫を残していくということと、科学技術や知識が維持・発展し今とは少し違う意味で「社会が維持」されるということとは、けして矛盾しないと思っています。ただ、私にとっては、働く働かないというのは、ほとんどどちらでもよい話題であって、「なぜ働かないでよいのか」という問いに対して、雑談以上の明確な答えを持っているわけではありません。それに答えるためには、私には知らないことが多すぎます。私が「普通の人として存在するための条件」というのは、もっとずっと初歩的なことで、たとえば、自分が何という名前で、どこに住んでいるのかを覚えておかなければなりません。私は胸に名札を付けて生まれてきたのではなく、両親が名前を付けて役所に登録したのです。自分の両親のすることならまだ愛着がありますが、自分と接するありとあらゆる人の親の取り決めを、自分も意識して守らなければならない。「人の名前」というのは一つの例ですが、そうして世界にべったりと粘着している記号が、べろりと剥がれていくのを必死に支えているのが「普通の人」であり、並々ならぬ「最低限のエネルギー」を必要とするわけです。そういう最低条件から解放されたいというのが、高架下で暮らす一つの(あくまで一つの)動機であったはずなのに、やはり高架下には高架下の、存在するための最低限の条件というのがあったのです。


ともかく、新入りが勝手に入ってきて、勝手に家を建てて住んでいる、このことがホームレスの先輩方には気に食わない、という雰囲気でした。いろいろ嫌なことが続いたのも、全部そこに原因があるように思いました。結局、ワンカップとおつまみのセットを持って一言挨拶をして回りました。自分を犠牲にし、マイナスの出発点を共有する要求に屈したのです。何の感情も無い、機嫌を取るためだけの形式的な挨拶です。しかしながら、効果は絶大でした。今度は良いことや不思議なことが続くようになるのですが、続きはまた今度・・・




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コメント


寝太郎さん、おはようございます。3年前も降ってたんですね。今年ほど春が待ち遠しいと思う年もないですね。

天下一 #b6t4Lcr6 | URL
2014/02/25 08:47 | edit



13 ■常識とは・・・・。

今回の文章、確かに「うーん」と考えさせるものがありました。「週5日働かなくてはいけない」とは一体、誰が決めたものなのか、という所がよいです。生活しているだけでいいんじゃないかな。よくよく考えれば大家とか資産家とか、そういう人たちなど、「働かなくて飯が食える」人たちもいますから、「週5日」というのは単なる世間体のための固定観念であるわけです。ただ、世間体をごまかすのも大変です。私なら「フリーのライターをしていて自宅で仕事してます」とか適当に言っときます(笑)ご近所付き合いも我が家ではいろいろと大変ですが、やむなく割り切ってます。ご近所付き合いがほとんどない寝太郎家はうらやましいです(^^)

とらのすけ #79D/WHSg | URL
2011/02/16 11:26 | edit



12 ■スリリング

HPを見つけて以降、いつも楽しく読ませてもらっています。自己犠牲、ワンカップ、効果絶大を知る。そうやって現実原則で人格を形成していき、それが人生観や世界観の土台となるのがフロイトの説明するところなのでしょうが、そんな現実原則に抵抗を感じてしまう姿は興味深いです。
ぼくは在宅自営業でなんとかわがままな暮らしを少しは実現していますが、仕事に縛られている意味では「普通の人」と変わりありません。どうやって原型の自分自身に帰り、それを生きるのか、残り長くない人生で見つけなければならない今後の課題です。
刺激をいつもくれてどうもありがとう。

グラース #79D/WHSg | URL
2011/02/14 19:35 | edit



11 ■無題

ゆめみがちサロン(2chまとめサイト)で紹介されていたので
拝見させていただきました。
読んでいて面白い。
到底真似できない,普通に働いている人より相当パワフルな人だと思いました。
恵まれた地位を捨てて全国を放浪してアラスカに旅立っていった映画イントゥ・ザ・ワイルドの主人公みたいですね

空白 #79D/WHSg | URL
2011/02/14 18:51 | edit



10 ■re:ホームレス時代の話

 興味深いです。
 結局、ホームレスになっても人間関係なんですねぇ。私はわずらわしいと思います。

 私は「人間は週5日働くべきだ」というシステムについては否定派です。働かなきゃいけないなんて誰が決めたんでしょう。

 寝太郎さんの言う通り、食費だけならそんなに働かなくても十分稼げます。私もその生活で十分満足なのですが、生きているだけでお金のかかる昨今、また、いったん働く生き方のレールから外れると人に雇ってもらえない今のシステムでは、嫌々でもとにかく働き続けなきゃいけないかな、とサラリーマン生活を続けています。

 早い事一生分の食費を稼ぎきってどこかで隠居生活をしたいものです。

リーマン #79D/WHSg | URL
2011/02/14 09:21 | edit



9 ■無題

こっそり、いつも読ませていただいております。

続き、楽しみです!

興味津々です。

アスタ #79D/WHSg | URL
2011/02/13 11:04 | edit



8 ■Re:私はどちらの話も面白いです

>MMさん
私の思考は内へ内へという傾向にあるようです
生活の向上心もびっくりするくらい低くて・・・

毎年寝太郎 #79D/WHSg | URL
2011/02/13 11:02 | edit



7 ■Re:最近つまらない

>エロ仙人さん
ブログがつまらないのは、私の今の生活が、本当はブログに耐えうるものではない単調なものだからだと思います。自分でも、ブログを書いて何をしたいのかよくわかりません。

毎年寝太郎 #79D/WHSg | URL
2011/02/13 10:46 | edit



6 ■共感します

寝太郎さんがどういういきさつで、Bライフと銘打った生活をはじめることになったのか興味がありました。
自分としてはもっともっと読みたいんですが、そうでない人も当然いることでしょう。
ブログの内容を、いつかまとめて書籍化されたらいいとおもいます。
そしたら晴れた日の河川敷に持ち出して読みたい。

毎日が日曜日 #79D/WHSg | URL
2011/02/13 00:21 | edit



5 ■無題

つまらなければ見なければいい。
私はいつも楽しく拝見させて頂いています。

お金はあるのにあえて今の様な暮らしをする
寝太郎さんに興味があったので、今回の更新も
非常に楽しめました。

私もこの様な最低限度の収入と支出でやっていく方法を模索していますが、家族がいるとなかなか難しいです。。。

もりそば #79D/WHSg | URL
2011/02/13 00:18 | edit



4 ■「」


俺も2さんと同じように
今回の記事は面白かったです
続きが楽しみです



竹 #79D/WHSg | URL
2011/02/12 23:24 | edit



3 ■私はどちらの話も面白いです

考えるという場合、自分の欲求を満たすだけ、
自分のことだけを考えると、恐らく少しも目新しいことも、深化した思考や概念も生まれないと思います。

理解とは要素と要素の「関係性」を認識するということだと思います、外部に目を向けないとその関係性、リンクを見ることはないと思います。

後、Bライフの実務的なことで言えば、もう一棟
「工作小屋」みたいなものを建てられて、工作レベルを機材、技術ともに上げて、システムを個人でどこまで、Bライフ的に増殖できるのかも
興味があります、自分は!

MM #79D/WHSg | URL
2011/02/12 23:02 | edit



2 ■無題

とても興味深く読ませて頂いてます。
特に今回の記事は面白かったです。
続きが楽しみです。

エンゼルパンダ #79D/WHSg | URL
2011/02/12 22:58 | edit



1 ■最近つまらない

ごめん。最近つまらない。
俺理屈や正当化を長々と読まされても、自分はつまらない。
おもしろいい人も当然いると思うけれど。
うまく内容を配分してほしいと思う。

エロ仙人 #79D/WHSg | URL
2011/02/12 22:14 | edit



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