寝太郎ブログ

2月10日文庫本発売→『自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ (ちくま文庫)』

対応が悪い宿の使い方  


安宿が面白いのは、同じ値段でも設備からロケーションからスタッフからあらゆる面でピンキリで、何があってもおかしくないというところ。日本の宿だったらある程度均一化されていて、最低限の設備・清潔さ・サービスが保証されている。だから、日本の宿で「部屋を見せてください」なんてことは滅多にない。その代わり、その安心にかなりの高額を支払う。

タイでも既に均一化されてきてはいるものの、それでも「ありえない宿」というのはたまに存在する。100B(≒300円)くらいだとどんなボロにあたっても怒る気はしないが、逆に信じられないくらいいい宿のときは嬉しい。これも「生活のベースを低く保つ」ことのメリットの一つだと思う。良くなくてあたりまえ、良いことがあればラッキー。人生、良いこと尽くめにしようとすると、疲れちゃうからね。

最近行ったチェンマイの「Walkinn Guesthouse」は本当に酷い宿だった。名前を出しているのは処罰感情からではない。名前を出したところで大した影響はないだろうし、面白いものが見れるので是非行ってみてほしいし、どうせBooking.comでも見ればすぐにどの宿かわかるからだ。

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一回目に行ったとき、受付のようなところでひょろ長い年齢不詳の少年(10代後半?)が大きなヘッドホンをはめてマウスをカチカチやっていた。何やらゲームに熱中しているようである。「予約したんですけど」と言ったら「ちょっと待って」と言われ、ゲームが一段落するまでしばし待たされる。僕はそれでもいろんな宿を経験してきたし、そのときも「ゲームでもしてんの」と笑って待っていた。応対は極めて雑だったが、一回目はそれだけのことだった。

最近、もう一回利用した。チェックインしようとしたら、やはり少年がゲームをしていてこちらを見ない。「予約したんですけど」と言うと、ヘッドホンを外して舌打ちし、突然ブツクサ言いながらキレはじめた。おそらく「なんでこんなタイミングで来るんだよ」みたいなことを呟いているのだろうと思う。もちろん僕の顔は覚えていないし、別の中国人の予約者と混同してパニックになっている。僕に向けた言葉は「パスポート」が最初で最後だった。乱暴に邪魔者を処理すると、またヘッドホンをかぶってしまった。

この少年はオーナーの息子らしく、朝の9時から夜の12時までずっと同じ机でゲームをしている。宿の客は出入りの際、その前を必ず通らなければならない。Booking.comのレビューでは「彼のゲームを決して邪魔してはならない!」みたいな冗談レビューもあった。たまに絶叫が聞こえてくるのだが、おそらくゲームに勝ったか負けたかのどちらかであろうと思う。

チェックアウトのときもゲーム中で、唯一放った言葉が「ブランケットは上?」だった。一瞬、何を問われたのかわからなかったが、つまり「ブランケットを持ち去ったりしてない?」ということだ。確かに僕は山高帽にスーツの英国紳士ではなくサンダルにTシャツの貧乏バックパッカーだが、いくらなんでもそんなこと聞くかね。というか、たとえバックパックの中にブランケットを忍ばせていたとしても「この中です」とは言わないだろう。

しかし、そのスタッフの対応を除けば、実はロケーションもよく、120B(≒360円)のわりに設備もよく、部屋も清潔で、とても良い宿なのだ。

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そして、少なくともこの宿の対応には「嘘」や「虚構」がない。虚構によって値段が上がっているということもない。彼はゲームが面白く、客なんてどうでもいいのだ。そのことによって僕は何の損もしないし、笑顔で迎え入れられたからといって何の得もしない。

それどころか、Booking.comのレビューでもこの息子のことばかり挙げられていて、その一点によって評価は最悪である。まともな神経の人なら絶対に二度と訪れないし、おそらくチェックインの時点でお断りするだろう。おかげで、この宿はいつ行ってもガラガラ、広々としたドミトリーを僕一人で使い放題なのだ。僕はこの悪い宿を喜んで使いたいと思う。




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category: タイ

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