寝太郎ブログ

2月10日文庫本発売→『自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ (ちくま文庫)』

芸、表現、ホンモノ病  


少しモノを考えることが好きな人間ならば、人生のどこかの時点で(おそらく自らが最も「それ」に蝕まれている時点で)、自分の考えや行動のどこまでに「パフォーマンス」「演技」「格好付け」「装飾」「フェイク」が潜んでいるのか、他人に対する芸やジェスチャーではない自分単体での動機に基づく行動があるのかどうか、真剣に思い悩むことがあるだろうと思う。そうして、少しでもパフォーマンスやフェイクが混じっているものを「ニセモノ」、そうでない純粋なものを「ホンモノ」として、最も単純なホンモノ-ニセモノの二元論に陥る。

そういう人間は、画家ゴッホのような人生を崇拝し、ある種の「精神病」の類に憧れ、「生きるために生きる」ことができなくなり、己のニセモノ具合を呪い、そして他人や世間にその憎悪を撒き散らしながら生きてゆくことになる。これを僕は「ホンモノ病」と呼んでいる。「ホンモノでなければ気が済まない」という病気である。

僕がそうだった。大学にいた頃は、全ての表現物が気に入らなかった。なぜならいかなる表現物も「他人に見せるために表現されている」という致命的な瑕を負っているからである。僕はこの二元論をうまく乗り越えることができず、こじらせてしまったほうである。僕は結局、アパートを飛び出して路上に出るまで、「他人や世間に見せるためでないものは何だろうか?」とずっと考え続けていた。

今はもう少し冷静に見ることができる。

第一に、これについて真剣に考え、本気で行動してみればわかるように、「パフォーマンス」に対する疑念は底無しである。日常の一挙手一投足は言わずもがな、パフォーマンスの呪縛を逃れられる可能性として真っ先に思いつく真理の世界ですらそうである。何かの知識を学習するとき、使用するとき、本当にこの「パフォーマンス」の力を使っていないだろうか。論理はどうか。数学はどうか。考え出すと際限が無い。その底の深さを知っている人ならば、安易に他人の言動を芸だパフォーマンスだと言ったりはしない。中途半端に自省する人間だけが、頭の中で作り上げた理想像の視点から他人に説教しようとする。

第二に、ホンモノ-ニセモノという二元論には多かれ少なかれ良い-悪いという価値判断が付随しているのであって、その価値判断の根拠は何だろうかと問い始めると、まるでわからなくなる。「他人に見せるための行動を取ることがある」というのは人間としての事実なのだから、何のためにそんな現象がこの世界に生じているのか、善悪の判断を横において考えなければならない。

第三に、僕はいずれ死ぬことを知っているが、それでも刻一刻と生きている矛盾した存在である。最初から、意図的なものと自然的なものに常に引き裂かれているのである。もしも、人間について全てのことを知りたいのであれば、そのニセモノ性とホンモノ性との両方と平等に付き合い、両方を深く理解しなければならないが、どちらか一方に強く惹かれること自体、「格好良く生きたい」というパフォーマンス性の現れである。

何のことを言っているのかわからない人は、この病気を患っていない証拠である。もしこの病気をこじらせて、「何も表現せずに死んでゆくのが一番良いのだ」と思い込んで縮こまってしまっている人がいたとすれば、つまらないことだと思う。ホンモノ-ニセモノの二元論は、表現論において結論ではなく、単なる入り口に過ぎない。臆せず表現すればいい。




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category: 表現
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2014/12/30 08:34 | edit



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2014/12/30 04:11 | edit



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2014/12/29 02:31 | edit



ヘンリー・ダーガー (Henry Darger) の作品は観ましたか?

No Name #- | URL
2014/12/28 18:07 | edit



最後の結論。すごく胸に響きました。

No Name #- | URL
2014/12/28 12:32 | edit



やった

何言ってんのか分からんかった!
「アリガトー寝太郎さん」

★かもめスタジオのかなも #NZD5K3i. | URL
2014/12/28 10:09 | edit



小屋暮らしブロガーを笑うネット上の意見を見て、それに反論しているのですね。

No Name #hMh.Rt3E | URL
2014/12/28 09:59 | edit



はじめまして。
寝太郎さんの言っている事は何となく分かります。別に深く考える事が好きなわけではありませんが。
自分以外の人の為に見せるパフォーマンスも、結局は自分自身なのだと思います。
自分を奮い立たせる為に、周りの人達の評価を得たいが為に己を犠牲にする事は悪であるとは思いません。
オチはここ?と思われるかも知れませんが、寝太郎さんが、これから真の愛を知った時、子供を持ち育んだ時に…そういう事かぁ…って思うのかも知れませんね。

チャオ #N2xqzRT. | URL
2014/12/28 03:31 | edit



一般的に、政治・経済性が「あまりに」帯びるとたたかれますね
どちらにしても、内面の葛藤でやり過ごすことはつまらないと思います

No Name #- | URL
2014/12/28 02:49 | edit



何事も原理主義的に考えると、結局死ぬしかなくなりますよね

No Name #- | URL
2014/12/28 02:47 | edit



なんだ、俺の事か・・・

80 #- | URL
2014/12/28 02:46 | edit



いつも的確な寝太郎さん

No Name #- | URL
2014/12/28 02:37 | edit



何言ってるか全然分かんねえ わっはっは

No Name #- | URL
2014/12/28 02:29 | edit



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