寝太郎ブログ

2月10日文庫本発売→『自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ (ちくま文庫)』

ゲストハウス掃除係つれづれ  


都内某所のゲストハウスで掃除係をやらせていただいている。掃除とベッドメイクをする代わりにタダで泊まらせてもらっている。

掃除は大好きである。掃いたり、片付けたり、捨てたりするのが好き。だいたい作ったり売ったりするものって意味のないものばかりだから、作るにしても売るにしても、こんなものなんで欲しいんだろと思いながらやるから仕事にも心が伴わない。本当に必要なもの、つまり水とかコメとかは、もうやるべき人たちが最善のやり方で作って売っているのだろうし。一方、掃除やゴミ処理というのはとてもシンプルで僕みたいな人間でもできるし、かなりプリミティヴに必要とされる仕事だと思うのだ。

今のところ掃除係で特に大変なことはない。なにしろ水もお湯も洗剤も使い放題だし、ゴミやチリはゴミ箱に、汚水は排水溝に流し込んでしまえばそれで終わりである。簡単なものである。

しいて言うなら、ムスリムの団体が来た時に、ポケモンポケモンと騒いでいたと思ったら次の瞬間にはいきなり狭い通路で一人ずつ目を瞑って神と語り合い出すので、いや神と交信するのはけっこうなのだが、その間僕はトイレに行けないのである。

今日のゲストは、マレーシア、マレーシア、マレーシア、マレーシア、マレーシア、ドイツ、香港、韓国、みたいな感じである。日本中に東南アジアみたいな1000円程度の宿があったらいいなと思う。今でこそホテル住まいというのは金持ちの贅沢だが、1000円くらいの宿が各地にあればバッグひとつで日本中に住むことができる。たぶん五年後くらいにはそんな感じになっているのではないだろうか。

掃除の仕事は、やはり短いスパンでやったりやらなかったりするわけにはいかないので、放浪癖のある自分が永続的にできる仕事ではなさそうである。なので、とりあえず都内に自分の拠点確保ついでにゲストハウスでも始めようかと思って物件を探したりしているのだが、いやまあ、なかなか難しい。

転貸の許可不許可という大家さんとの関係上の難しさと、旅館業法上の難しさとあって、物件を探し始める前は転貸の問題よりも旅館業法の問題のほうが厄介だと思っていたが、今はむしろ逆の印象である。

だいたい現状、どこの不動産屋も賃貸契約書にデフォルトで「転貸禁止」の項を組み込んでいるような状況で、個人が個別交渉して認めてもらえるわけがない。ましてや、外国人に対する拒否反応とか、あるいは僕が想定しているようなドミトリー的な大人数への転貸だったりすると、もう絶望的である。

旅館業関係の法律が整うまでは無料でやってみようかと考えていた(無料ならば旅館業法関係なし)のだが、大家さんにとっては転貸が有償か無償かなどまったく関係のないことで、とにかくよく知らない人に使ってもらっては困るということなのだ。なので、今考えていることを馬鹿正直にやろうとすると、既に転貸を認められた転貸許可物件のような割高な物件を借りておいて無料で貸し出すというような、僕の財布にとっては非常に厳しいことになってしまう。

物件探しのことをダラダラ書き出すとキリがないのだが、不動産屋というのはどうしてああも押し並べていやらしい感じになってしまうのだろうか。特に、大手不動産屋。明らかにコピペの返信メールの中に「当物件は非常に多くの問い合わせをいただいている」との文言が入っていたり、僕をしょうもないことで褒めてみたり、探しているエリアのカフェの話、そこで食べたカレーの話、僕の興味があるない以前に、相手が僕に伝えたいという気持ちがゼロ。あんなに虚しい会話はない。まあでも、ああいうのが流行っているということは、お客のほうもそうやってなんとなくいい気持ちにさせられるのがスタンダードになっているのだろう。

ほんと、たくさんのお金で買えるものはニセモノばかりだし、お金や契約が関わってくるとロクなことがない。お金や契約というものの心の切れた感じ、人間味のなさ、不信感、無意味さは、いちいち人の心と接触しないで済む点でとても便利なのだが、お金や契約の論理がまるっきり人格そのものになってしまっている人間は心底苦手である。

そもそも賃貸契約にあたって借り手が家主に会わないなんて根本的におかしい話で、どうしてこういう慣習になっているのだろう。顔を合わさないと、結局、数字や記号だけで判断する。だから、みんな数字や記号を欲しがるのだろう。他の大切なものを捨ててでも、いくつかの数字と記号だけは死守しようとするのだろう。

無職で年齢も進むとだんだんアパートも借りられなくなってくるのだろうし、もうこの不動産賃貸に関わる一切合切、つまり社会というものの権化と付き合わなくても生きて行けると思うと、小屋の存在も捨てたものではないと思う。




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category: ゲストハウス

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