寝太郎ブログ

2018年12月6日雑誌発売→『kotoba(コトバ) 2019年 冬号』特集・孤独のレッスン

最近思うこと、文庫『スモールハウス』の発売に添えて  


文庫版『スモールハウス 3坪で手に入れるシンプルで自由な生き方』が筑摩書房より4月9日~11日あたりに発売になります。

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現実はひとまず横に置いておいて、僕個人が理想とする生活だけを言うならば、平穏で、自由で、静謐な生活、僕がよく「静謐」という言葉を入れるのは、ただ単に自由なだけでなく生活のどこかにちょっとした緊張感が必要だからなのだが、ともかく、そんな生活のための道具装置として、小屋ないしはスモールハウス以上のものは考えられない。必要なものは、多少の衣服と、ストーブと、きれいな水と、幾らかの田畑と、小屋。加えて朝の目覚めが鶏の鳴き声であれば百点満点である。この画は中学生の頃から変わっていない。そしてこの個人的な理想が全世界に拡張されたとして、いったい人類から何が失われるのだろうか、とも思う。体の弱った人を除く全ての人が等しく質素に暮らす。教育は小学課程くらいまでで充分だろう。それ以上は学問をやりたいもののみがやればよい。娯楽と芸術の大半は自然そのものに親しむことに取って代わられる。何よりこの不可解な物、規則、計算の数々は不要になる。

そうは言っても、僕らは現実社会の中で生きてゆかなければならない。周りが質素な生活をしている中で質素な生活をするよりも、自分だけが質素な生活をすることのほうが格段に難しい。本書『スモールハウス』では、そこのところをどう肯定的に転化させたらよいのか、現行の社会の中でやるからこその強みというものに、要所要所で注目している。一言でいえば、「共産主義は個人が富を搾取して抜きん出ることを禁じているのに対し、資本主義において周囲と同水準の富の追求を放棄して逸脱することは禁じられていない(p.153)」にもかかわらず、その恩恵は享受することができる。昨日僕はスーパーで豆腐を買ったのだが、あんなにおいしくて、栄養価が高くて、手がかかるものを、滅菌密封された状態で300g29円で買えるのは奇跡なのである。まあこういうことをいちいちはっきりと書くと、また「矛盾してる!」とか言われたりするわけだが。

さて、小屋暮らしだけでなく広くオルタナティブライフスタイルと呼ばれているもの、特に僕が念頭に置いているのは低消費生活なのだが、これに紛れもなく純粋な希望とともに突き進む人に関しては、生き方を薦めるというおこがましい話ではないが、少なくとも否定する理由は何もないように思う。たとえば既に家庭を築いていて家族の志が同じ方向を向いているとか、最近話を聞かせていただいた人では旅や山登りが好きで仕方がないとか、社会問題や環境問題に本気で関心がありアクションを起こしたい人であるとか、とにかく生活自体とは別の動機や文脈がある人、他の物語の中に低消費生活を位置づけられる人、これはもう自由にやれば良いと思う。小屋暮らしは素晴らしいものだし、きっと役に立つ。

ただ、単に何もかも煩わしくて、生命活動を縮小したい、社会と距離を置きたい、目的もなくひたすら怠惰でいたい、人生を断捨離したいというような人、これはまさに小屋を建てていた頃の僕自身なのだが、そういう逃亡志向の人に対しては、僕は今は「やめたほうがいいのでは」と言うことにしている。その時代、社会、他人が紡ぎ出してくれる物語から距離を置いて、自分一人で生きるようになるとき、最も問題なのは、不安、恐怖、罪悪、自己否定といったマイナスの感情に対して逃げ場がなくなることである。人生上の大抵の問題に関しては、そういうものだったと自分自身が諦めさえすれば解決する。しかし、諦観のような手緩い方法では太刀打ちできない問題もある。一つは、自分自身の死の観念であり、もう一つは、他人の苦しみ悲しみである。

まずは、自分がこの時代に生まれたという事実、そしてこの世に生を受けてから出会った人々のことを大切にして、時代を感じながら生きていって欲しい。まあやめたほうがいいと言ってもやる人はやるわけで、やってみて自分で判断するしかないわけで、まさに僕もそのような人種なのでそれはそれで親近感があるのだが。

最近強く思っていることなのでつい書いてしまったが、本書『スモールハウス』はもう少し気楽な内容なので御心配なく。自分のような自作小屋生活はマイノリティの中でもさらに辺境に位置しているという自覚があり、いつもどの視点からものを書いていいのか迷う。まあ辺境と言っても、最近は生活の比重が東京に傾き、「別荘持ち無職」くらいの比較的穏やかな感じになってきただろうか。畑が始まったらどうなるかわからないが、いずれにしても定職につかずに生きてゆく方法の模索は続く。







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『スモールハウス』文庫化  


小屋帰宅。

・まだ先ですが、拙著『スモールハウス』の文庫版が筑摩書房から出ます。

・いくつか雑誌に記事を書きました。

「建築ジャーナル 特集 小さな家」
形のない「生」に形を与える「家」と、形のない「思考」に形を与える「言葉」は似ていて、「生」よりも「家」、「思考」よりも「言葉」が先行して空回り・形骸化しているようなときには、それらの断捨離や住み替えが重要だということを、小屋との関連で書きました。

「フィナム アンプラグド」
現物が手元にないのですが、インタビューの時は「人間の頭の中には死という耐え難い観念があるので、全き孤独の中に生きることは難しい」というようなことを話しました。
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『自作の小屋で暮らそう』は昨年無事に重版されたそうです。

『自作の小屋で暮らそう』の韓国語版も出ます(時期未定)。

『僕はなぜ小屋で暮らすようになったか』の韓国語版も進んでいたのですが、訳ができてから改めて向こうの出版社の方が読んでみて「思っていたのと違う」ということで取りやめになったそうです。詳しい経緯は知りませんが、つまり、筆者個人の回顧や心情吐露が延々と続き、いつまで経っても雇用問題、住宅問題、環境問題、政治問題、経済問題、なんにも出てこないじゃないか、というようなことかもしれません。『ぼくはお金を使わずに生きることにした』みたいな本を期待していたのかもしれません。無念。


どの家も久しぶりに帰るとその「勝手知ったる」感が嬉しかったりすると思うが、小屋の「勝手知ったる」感は格別である。なにしろ何もかも知っている。

しばらくは東京と山梨の二地域居住みたいになりそう。やはり三作目がきつかった。だいぶ消耗した。それ以降、あっちゃこっちゃさまよっている。どうせどこへも行けないのに。ロケットに乗っても、大金を稼いでも、人類に貢献しても、僕はどこへも行けない。どうやって生きていったらいいのかねえ。

そういえば昨秋、結局大豆は収穫できなかった。両手に抱えるくらい株を抜いてきて脱穀しても、シワがついていたり、変色していたりして、きれいな丸々した大豆は手のひら一杯くらいしか採れないので、馬鹿らしくてやめてしまった。




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本が出ます。『自作の小屋で暮らそう ―Bライフの愉しみ』  


僕の処女作『Bライフ』が、『自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ』と改題されて、文庫として2月10日に筑摩書房から出版されます。

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都会育ちの人間であっても、土地を買って自分で小屋を建てて暮らすという単純なことがどうしてできないだろうか、いやできないはずがない、そういう本です。

「安い土地を買って適当に小屋でも建てて住んじゃおう」という、つまり僕が「Bライフ」と呼んできた概念について、単行本『Bライフ』が出てより後も個人的な動機や少し広い視点から見た社会的意義など言及してきましたが、核となっているライフスタイルそのものについてはこの『Bライフ』で簡潔に言い尽くされていると思います。

文庫化にあたって、時代遅れになった数字を直したり、薪ストーブの項を付け加えたりしました。薪ストーブの火にほだされて合理的な思考ができなくなってしまった筆者の嘆きが読めます。

あぁ、筆者は馬鹿になってしまった。

かとうちあきさんに解説文を、髙坂勝さんに帯文をいただきました。ありがとうございます。

かとうちあきさんは『野宿入門―ちょっと自由になる生き方』の著者で、「人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』」の編集長であり、ご自身も野宿愛好家です。野宿と言えば僕もちょっとした自負があります。大学時代友人と名古屋から若狭湾まで行った徒歩旅行、大学院時代の都内公園徘徊、路上生活、小屋建築前のテント生活、河川敷のテント生活、つい最近の徒歩旅行などを全て合わせると、軽く1年や2年は野宿をしてきました。野宿業界ではエリートキャリア組です。むしろ野宿では長期的に暮らしてゆけないので仕方が無く小屋を建てたというような経緯があります。

また、髙坂勝さんは『減速して自由に生きる ダウンシフターズ』『次の時代を、先に生きる。 - まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ -』の著者で、ご自身の経営する都内のオーガニックバー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」と千葉の畑とを往来する生活、いわゆる二地域居住をされています。これは僕にとっても憧れであり、現実的な選択肢の一つなのかなと思います。僕の場合はバーの代わりに私塾とかになるのかもしれません。

誤解があるとよくないので書いておくと、僕自身は今は定常的に小屋に住んでいるわけではなく、ちょくちょく小屋に帰ってはいるものの、都会で屋根と電気水道のある比較的普通の生活をしています。今後の予定は何一つ決まっていません。

いわゆるメインストリームから逸れた生き方は千差万別いろいろあります。自作小屋という方法が最適な解かどうかはわかりませんが、ひとつの選択肢としてもっと認知されてゆけばおもしろいと思います。小屋生活志望者だけでなく、野次馬紳士の皆さんもぜひ、ちくま文庫『自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ』を本屋さんで手に取ってみてください。





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