寝太郎ブログ

フードデリバリー戦国時代(配達員目線から)  


今フードデリバリーでコンスタントに時給3000円を得るのは難しくない。稼働日や時間帯を選べば瞬間的には時給5000円も出る。配達に慣れた人や体力オバケみたいな人は月100万を稼ぐ。

つい一年ほど前は、フリー(業務委託)の配達員にとってはウーバーの存在感が圧倒的で、出前館は時給制で1000~1200円だったし、Chompyなんかも出てきたけれど差別化もよくわからず、依然としてウーバー一択だった。「来年の今頃は配達員も飽和して、報酬も絞られて、それでもやるという人だけ残るような世界になっているだろう」と、みんな多かれ少なかれ思っていたのではないか。

それが、コロナ禍の宅配需要スパークを経て、気が付いてみればフードデリバリー戦国時代。以前精力的にウーバーをやっていた配達員たちは出前館(業務委託)やFOODNEKO、menuに比重を移しているか、少なくとも掛け持ちしている。ウーバーイーツの売り上げランキングを見ていても、東京勢をめっきり見なくなった。複数のサービスを掛け持ちしているからである(他にも理由はあるが)。掛け持ちの理由は単純で、他社のほうが儲かるからだ。

出前館は配達員報酬を公表していないが、配達員募集広告には「一件1000円も」と出ており、実際にそうである。FOODNEKOも一件1200円など。注文数は未だにウーバーが群を抜いているので、同時オンラインにして、出前館やFOODNEKOの注文が入らない時間をウーバーの配達で埋める。

ウーバーの配達員報酬は、いろいろ加味すると一件600円程度である。600円を配達員に払ってどうやって利益を出しているのか不思議だったが、他社の1000円、1200円というのはもうよくわからない世界である。

Shared Researchのレポートに依れば、出前館の注文単価は平均2800円程度(2020年8月)。お店が払う手数料が売り上げの35%であるから、送料無料のお店でちょうど配達員に払う1000円とトントン。もちろんサービスの維持に必要なお金は配達員報酬だけではないから、業務委託が運べば運ぶほど出前館は赤字になる。

それでも、業務委託は必要とされている。業務委託配達員はいくらいても全く固定費がかからない。なんなら都民全員が委託配達員でも問題ない。注文の多い時間帯や、少ないはずの時間帯にポコッと湧いて出た注文に隙間時間で対応してくれる業務委託配達員が街に散らばっていてくれれば、その案件単体で利益を生まなくても、サービスを回していくためには便利な存在である。

もちろん、シェアを競って投資中ということもある。前述のレポートには「2021年8月期に「出前館事業拡大のための大規模な投資実行」を行い、2022年8月期にはシェアリングデリバリーによる赤字を除く「出前館サイトの収益化」を目指す」「そのうえで、2023年8月期にはシェアリングデリバリーの通期黒字化を目指す」とある。「シェアリングデリバリーを除く」というのは、出前館はそもそも配達代行というより、注文のプラットフォームのような役割が大きく、お店による自社配達が多かったからだ。とにかく、2021年の8月までに集中投資して、2023年の8月までには安定的に黒字にする算段らしい。

配達員以外の人にはあまり知られていないが、どのサービスでも運んでいる人は同じである(出前館は業務委託以外にも時給制のアルバイトさんがいるが)。複数のドライバーアプリを起動して、入った注文を受ける。ウーバーの注文が入ればウーバー配達員、出前館の注文が入ればその瞬間から出前館の配達員である。

「あの自転車なに?」の時代からフードデリバリーが認知されたのもウーバーのおかげだし、お店がフードデリバリーに慣れてきたのもウーバーのおかげだし、少なからぬフリーの配達員が、ウーバーによって育てられた。ところが配達員は、少しでも条件が良いデリバリーサービスが出てくれば、あっという間に鞍替えしてしまう。そこには法的な結びつきも、心の結びつきもない。実際、どの会社もウーバー配達員を堂々と引き抜こうとしている(ツイッターにDMがくる、拠点で勧誘される、etc)。しかも、世間的には、ウーバーには素人業の悪いイメージが、出前館には日本的なサービスの良いイメージが定着しているようにすら思える。ちょっと、ウーバーがかわいそうな気もする。

他社の勃興が理由かどうかは分からないが、最近は少しでも天候が悪化するとウーバーがブラックアウトすることが多くなった。つまり、配達員不足で注文不可能になる。基本的に寒い日や雨の日は注文が多く、配達員も稼ぎ時なのだが、あまりに需給バランスが崩れるとサービス自体が停止してしまい、逆に全く注文が入らなくて配達員の売り上げもゼロということになる。配達員もそれを恐れて雨の日は出なくなる。負のスパイラルである。

現状、フードデリバリーは富裕層のためのサービスである。お店で買うより商品も高いし、配達料もかかる。庶民は日常的にウーバーイーツなど使わない。買いに行く数十分の時間と労力に1000円払える人たちのためのサービスである。配達員も届け先のお宅を探すときにまず綺麗なマンションから探す。

富裕層の富に直接的にアクセスできるのは、高級レストランとか、水商売とか、限られていたが、それが自転車に乗った普通の人ができるようになった、だからこその時給3000円、そんな風にも理解している。

フードデリバリー界隈では良くも悪くも毎日のように何か変化が起こっていて、一か月後、何がどうなっているかわからない。もしかしたら何社かは撤退しているかもしれない。冬が終わり、緊急事態宣言も明けて、もしかしたらいったんは落ち着くかもしれない。けれどもまだ何年というスパンで覇権争いが続くのは確実で、配達員としては大歓迎である。




category: UberEats

コメント


以前テレビで見たのですが、
海辺にある食堂の出前では、
磯の小島にいる釣り人に、
あったかいチャンポンを、船を使って届けていました。
それも出前賃は無料。

届けているご主人は、満足げでしたが
奥さんは不満げでした。
私は見てて、労力と対価がつり合っていない感じに、
なんかしんみりしてしまいました。





タマ #- | URL
2021/02/20 00:02 | edit



こんばんは

寝太郎様、お元気そうで何よりです。

>現状、フードデリバリーは富裕層のためのサービスである。

あ、やっぱり! 「店屋物を誂える」ということですからね。
昔の都市部の富裕層は、店屋物を誂える場合が多かったそうです。
で、私みたいな田舎者は竈で煮炊きしたり、弁当を持って仕事に行ったり(笑)
古いのか新しいのかわからない状況で、当分、楽しめそうですね。

エム #- | URL
2021/02/19 02:57 | edit



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